クラウド環境を安定して運用するには、「監視」が欠かせません。
Oracle Cloud Infrastructure(OCI)には、豊富な監視機能が備わっており、システムの状態をリアルタイムに把握し、トラブルの未然防止や対応を行うことが可能です。
この記事では、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)における監視の基本から、内部監視と外形監視の違い、そして実際に使える監視ツールや構成のポイントまでをわかりやすく解説します。
そもそも「監視」とは?
監視 = システムが期待通りに動いているか、常に見守ること。
監視の目的は、ただ「見る」だけではなく、次のようなリスクの早期発見と回避です。
- 異常の検知とアラート通知
- 利用状況の可視化と設定・構成・コードなどの最適化
- トラブル発生時の原因追跡
- SLA(サービスレベル)の維持
OCIにおける監視の2つの種類
OCIでの監視は、大きく以下の2種類に分かれます。
種類 | 内容 | 主な対象 |
---|---|---|
内部監視 | OCIリソースのメトリクス収集・ログ監視 | CPU、メモリ、ストレージ、API操作など |
外形監視 | 外部からユーザー視点でサービスを監視 | Webサイト、API、SSL、DNS など |
内部監視(Infrastructure Monitoring)
OCIでは、以下の機能で内部の状態を詳細に把握できます。
✅ Monitoring(メトリクス収集とアラーム通知)
OCI Monitoringでは、各リソースの状態を数値化し、継続的に監視できます。
主な監視対象メトリクス:
- CPU使用率
- メモリ使用量
- ネットワークトラフィック
- ディスクI/O など
アラームの活用:
収集したメトリクスに対して閾値を設定することで、異常を自動検知し通知が可能です。
例: CPU使用率 > 80%
→ アラート送信 → Slack連携で通知
✅ Logging(ログの収集・検索・活用)
OCI Loggingを活用することで、各種ログデータの可視化と分析が可能になります。
主な特徴:
- システムログ、アプリケーションログ、API操作ログなどの収集
- キーワードや属性による検索・フィルタリング
典型的な活用例:
- IAM操作ログから不正なアクセスの兆候を検知
- システム起動ログから障害のタイミングを特定
これらの内部監視機能を組み合わせることで、OCIリソースの状態をリアルタイムかつ多面的に把握でき、トラブルの予防と迅速な対応につながります。
外形監視とは?(Synthetic Monitoring)
実際のユーザーと同じ目線で、OCIの外からシステムの稼働確認を行う方法です。
内部では正常でも、外部からアクセスできない場合は「サービス停止」とみなされることもあります。
このギャップを埋めるのが外形監視です。
よくある監視項目
チェック内容 | 具体例 |
---|---|
HTTPステータス | サイト/APIが200 OKを返すか |
応答時間 | ページ読み込みが3秒以内か |
SSL証明書の有効期限 | 有効期限切れの前に通知を受ける |
DNS解決の可否 | 名前解決に失敗していないか |
UI表示の確認 | 特定のボタンやテキストが表示されるか |
OCIで外形監視を行う方法
OCI Application Performance Monitoring(APM)
OCIネイティブの監視ツール。以下のような合成モニタリングが可能です。
- HTTPチェックを定期的に実施
- 世界中の拠点からWebサイトやAPIの応答を監視
- レスポンス時間やエラー率を可視化
OCI上だけで「外形監視 + 内部監視」を一元管理できるのが大きなメリットです。
サードパーティ製ツールと連携
実際の運用では、以下のような監視サービスをOCIと併用するケースも多いです
- Datadog:インフラ/アプリ監視とダッシュボードに強い
- PagerDuty / Slack連携:障害時の即時通知・オンコール対応
- Mackerel / Pingdom:死活監視や応答時間監視
内部監視と外形監視による二重の監視体制の構築
項目 | 外形監視 | 内部監視 |
---|---|---|
視点 | ユーザー視点(外部) | システム管理者視点(内部) |
主な対象 | Web/APIの動作・応答性 | OCIインフラの状態、ログ、メトリクス |
典型的な異常 | サイトダウン、DNS障害、SSL失効 | 高負荷、エラー多発、ログ異常 |
活用目的 | 稼働確認とユーザー体験の保証 | 異常の検知と原因分析 |
まとめ:OCI監視のベストプラクティス
OCIを用いたクラウド運用において、監視は安定稼働と信頼性を支える重要な要素です。
- 内部監視では、リソースの使用状況や障害の予兆を把握し、インフラレベルの健全性を維持します。
- 外形監視では、実際のユーザー体験に近い視点から、WebサービスやAPIの可用性・応答性をチェックします。
- この2つを組み合わせて運用することが、OCI環境における監視体制の基本方針です。
OCIが提供する各種監視機能やAPMツール、さらには外部サービスとの連携を活用することで、「障害が起きてから対応する」のではなく、「起きる前に気づいて対処する」というプロアクティブな運用が可能になります。今後のクラウド環境における継続的な安定運用のためにも、監視体制の見直し・強化を検討してみてはいかがでしょうか。
参考リンク